
島田荘司です。
今年はいっさい脇目を振らず、頑張ります。みなさん、よろしくお願いしますね。
今年の刊行物の予定を、一部お知らせします。まず南雲堂刊、「島田荘司全集」について。第1回配本の時期は未定で、これは南雲社長に訊いてください。私の方は仕事を終えました。
第1回配本の収録作品は、「占星術殺人事件」、「斜め屋敷の犯罪」、「死者が飲む水」の3作です。以降順次、刊行順に出していく予定です。箱入りの豪華本で、装丁は「アトポス」の戸田ツトムさんに依頼の予定です。定価は3000円と少しになるでしょう。
3作とももう20年も昔の作品なので、読み返してみると、現在の私の感覚ではちょっと読むのにきびしいものを感じたので、3作ともに、これは徹底的に加筆修正を施しました。したがって全集第1回配本は、3作ともに改訂完全版の集合として刊行されます。
それぞれの修正点について、以下に述べます。
「占星術殺人事件」は、句読点や言いまわしの全面見直し以外に、3点ほどあります。アゾート殺人による犠牲者の娘たちの、発見日の表を作って入れました。イギリスのレイラインに類例を見るような、日本の古い宗教施設のライン(不思議なことに直線状に並んでいます。作中の平吉も、この直線の存在に独自に気づいていたことになります)に、もう少し言及しました。それから、以前から気になっていた平吉殺しの補強をしました。
この作品が2003年の初頭、全面加筆修正されるのはちょっとした事件なので、全集刊行後、その販売の邪魔をしない時期を見て、M澤さんがこれを「改定完全版・占星術殺人事件」として、講談社文庫でも再刊行を計画してくれています。
それからすでにコピーを友人のマッケンジー夫妻に渡しましたので、彼らが今、英訳文にもこの改訂版を反映する作業をしてくれています。
「斜め屋敷の犯罪」の加筆修正点は、20年前には調べきれなかったユダヤ教の神秘的な奥義、「ゴーレム」について、全体のバランスをくずさない程度に加筆をしました。それから塔の下の花壇の図を、3Dふうにシルエットで描き直してみました。これでこの2作品、やっと安心できるレヴェルの文章と内容に落ちつけたかなと思っています。
この作品も、M澤さんはいずれ「改訂完全版・斜め屋敷の犯罪」として、講談社文庫で再刊行を計画してくれています。
「死者が飲む水」が、最も多く加筆したかもしれません。殺人に使われる水についての説明を補強しました。ちょうど今、日本の過精製塩について調べていましたし、水の汚れ、それから「水が腐る」という現象についても、バランス崩さない範囲に薀蓄を加えました。読み返すとこの作品、前2作に劣らないくらいに細部まで頑張って作ってあリ、意外にも思ったし、感心もしました。現在の私も、過去の自分に負けな
いように頑張らなくてはいけないと感じました。
以下、刊行月が決まっている書物について、少し述べます。このほかにも計画は多々ありますが、刊行月が決まっていないので、まだ述べないでおきます。
講談社文庫、「Pの密室」ができあがり、こちらに向けて発送されたとM澤さんよりメイル入りました。まもなく書店にも出るでしょう。赤が基調の綺麗な表紙で、表4のあらすじは、M澤さんの力作です。
3月に、原書房より「上高地の切り裂きジャック」という御手洗ものの中編集が出ます。これは200枚強の中編、「上高地の切り裂きジャック」を書き下ろしたので、以前の作品、これももう長編なみの枚数があるのですが、「山手の幽霊」とカップリングで刊行します。
「上高地の切り裂きジャック」では、すでにセリトス女子大を卒業し、法律事務所に就職している里美ちゃんの近況が見えます。彼女の上司も出演します。もちろん石岡先生が最も活躍し、御手洗さんも大いに電話出演しています。また磯子署の蓮見刑事が出番多く活躍します。
この本の装丁は、「ロシア幽霊軍艦事件」の岡さんに依頼しています。今彼は、大変に意欲的なデザインを計画してくれています。トレペ印刷で、これに実際に亀裂を入れるという3D的な目論見です。しかしコストがかかるかも知れず、そうなら見送りとなる可能性もありますが、なんとか実現して欲しいところです。
講談社で4月に、「21世紀本格宣言(仮題)」と題するエッセー集を四六上製本で出します。世紀の変わり目の今、日本の本格探偵小説のコンセプトに、新たな提案を付け加えようとするものです。これまでにあちこちに発表した論文や、解説文などを中心とはしますが、書き下ろしも、大幅加筆の原稿も用意します。Pattyさんの本の巻末に書いた「コナン・ドイルはフレッチャー・ロビンソンを殺したか」、も、大幅に加筆して、ここではいろいろな情報や意見を、遠慮なく述べています。
昨年のミステリーマスターズ・シリーズに続いて、今年は講談社の書き下ろしジュブナイル企画、「ミステリー・ランド」シリーズに参加します。これもまた先陣を切り、「透明人間(仮題)」という小説を書き下ろします。第1陣はほかに有栖川有栖さん、小野不由美さん、殊能将之さんの4人で、7月刊行の予定です。2陣以降は人数少なくなるようです。
その他、新情報を少しお伝えしましょうか。
岩波先生がロンドンの書店で、「Jack the Ripper and the Whitechapel murders」という、非常に面白い刊行物を見つけました。イギリスでは、パトリシア・コーンウェルの影響もあり、また切り裂きジャックのブーミングが来ているようです。これを岩波さんが今翻訳しています。そして私が監修というかたちで、今年原書房から刊行を予定しています。事件発生同時、ジャックから来た赤インクの手紙など、スコットランドヤードが当時手にした手がかりを、読者もまた今手にできる――という趣向の出版物です。ヴィジュアル的にも綺麗な刊行物なので、是非期待していてください。
また岩波明さんは今年、光文社カッパノベルスのご存知A井N充編集者の担当で、「闇の中の猫」という本格ミステリーを出版する予定になっています。いよいよ彼も作家デビューです。応援してあげてください。
カキフライカヌーさんとの合作「天に還る舟」も、かなり進んでいます。もうちょっと待ってください。これも今年には刊行します。
書き下ろし漫画、「御手洗君の冒険」も、かなり進んでいるようです。上下版で、夏までには現れるでしょう。
ではそんなところで。
2003年 2月6日 島田荘司