
肌寒くなってきましたね。みなさん元気でやっていますか?
光文社、カッパノベルスの「21世紀本格のアンソロジー」ですが、この表紙、tenさんの作品で行くことが決定しました。これは大変なことですよ。なにしろカッパノベルスといえば、松本清張さん、高木彬光さん、森村誠一さんなどを世に送り出し、日本の推理小説を作ってきた大老舗です。南雲堂「パロディ・サイト事件1・2」に続いての快挙ですね。SSKから、いよいよ本格的なプロの装丁家の誕生です。みんなも祝福してあげてください。tenさんにはこれからも頑張ってもらい、どんどん有名になってもらいたいものです。
この本に関して、これ以外にもいろいろと決定しました。ここで中間報告をしましょう。まずタイトル、「21世紀本格のアンソロジー」と決定です。発売は年末の12月、日にちはまだ未定です。
参加作家は、50音順に響堂新さん、私島田荘司、瀬名秀明さん、柄刀一さん、氷川透さん、松尾詩朗さん、麻耶雄嵩さん、森博嗣さんの8名です。私は別として、そうそうたるメンバーです。もう一人霧舎巧さんがいたのですが、彼が書いてくれた「月の光の輝く夜に」という作品、これは幻想的なとてもよい小品だったのですが、血友病を扱っているため、できとは無関係に出版のコードにひっかかり、改善して出版可能とするためには抜本的な構成変えをしなくてはならず、しかしその時間がないので、光文社は別の作品をとお願いしたのですが、霧舎さんが講談社など次の執筆スケジュールが詰まっていたため、涙をのんで今回は降りることになってしまいました。しかし私は、この作品をこの企画とは別に発表を可能とするため、近く彼と会い、細部までの改造に、彼と挑戦してみたいものと考えています。
10月27日の現時点で、最終校了までにもう一ヶ月を切っているのですが、まだ原稿が届いていない人が3人います。すでに原稿が来て、私が読んでいるものに関してのみ、以下でタイトルと内容を、さしつかえのない範囲でご紹介しましょう。
響堂新さんの作品は「神の手」。これはイスラエルにあるクローン臓器の研究開発施設に、神の手と異名をとる天才的な日本人医師がおり、彼の才能と野心は臓器に留まらず、ある手法を用いて創造主の領域にまで踏み込んでしまったため、新たなモルグ街が施設内に出現します。いずれ来たるべき世界、そういう近未来社会への警鐘を込めた、専門家の意欲的な問題提起です。
拙作は「ヘルター・スケルター」。ヴェトナム戦争の勇者で、もう誰の目にも老人となっている男、しかし彼の時間は60年代でストップしており、しかも絶えず常人とは違った世界認識を行う。それは彼の脳が、戦争で負傷したためと思われた。精神を今、現在の正常に呼び戻さなくては彼は廃人となる。そこである女医が、5時間のみ有効なある薬物を用いて彼の治療にあたるのだが−−−。ラストの衝撃では、拙作短・中編中、1、2かもしれません。
瀬名秀明さん、まだ来ていません。非常に期待しているところです。
柄刀一さんは「百匹目の猿」。最新科学のウォッチャーらしい、ユニークな着目の力作です。最新科学各分野でのエポックな成果を、ピースのように用いながら、一枚の、思いもかけないジグソー・パズルを組みあげて見せます。意欲作ですね。
氷川透さんもまだ来ていません。期待しています。
松尾詩朗さんは「原子を裁く核酸」。これもシステム・エンジアで、最新科学ウォッチングが趣味の彼らしいユニークな作品。最新科学の用語と、コンピューター世界の知識を、ある奇人が散文的な会社組織に投影した時、奇妙で理解不能の殺人事件がCGのように像を結びます。その思いがけなさ、型破りぶりは、誰にも理由の説明ができません。ある一人の男を除いては。これも大変感心させられる作品です。
麻耶雄嵩さんもまだ届いていません。大期待しているところです。
森博嗣さんは「トロイの木馬」、これは英文サブ・タイトルの「Trojan Horse Program」の方が、作品の構造をよく説明しているかもしれません。現在以上に徹底してヴァーチャルな世界に棲むようになっている未来の若者の、日常的な感性や思想を、特有の文学的筆致で描いた、不思議な味わいのある小説です。かつての犀川&萌絵シリーズにも見られた、一行一行固有の発見を探り当てながら進む彼の文章が、デジタルな電気信号のように現れながら、特有の芳香を放ちます。新境地を示す力作です。
このアンソロジーは、閉塞状況のようにも見える、あるいはやがてそうなりそうに懸念される日本の本格に、最新科学のキーワードを用いて、電気刺激を与えようとするものです。この方面の資質があると見込んで私が選んだ各才能たちは、今回とてもよい仕事ぶりを見せてくれました。あとは残る人たち、瀬名さん、氷川さん、麻耶さんが、はたして私の絶大な期待に応えてくださるものか、大いに楽しみにして、待っているところです。
そしてこの奇想サイトの人たちにとっては、そして私にとっても、このような一線級の才能が集う、新世紀初頭の歴史的なアンソロジーの表紙を、仲間のtenさんが飾るということに大きな意義があります。これはそのまま、わがSSKの大きな将来性を語っているからです。今回の彼の作品は、血管の内部を表現した画像です。とても奇麗な出来ですよ。管理人の今回の仕事をみなで祝福し、そし
今後さらに飛躍してくれることを期待しましょう。
今回の表紙は、多田さんという大阪のグラフィック・デザイナーが文字入れを担当します。アンソロジーという性格上、著者名や文字の量が多いですから、別個に文字のプロともいうべき人を立てました。
なおこの多田さんは、光文社文庫の吉敷竹史シリーズの新装丁も担当してくれます 。吉敷のシリーズは、みなさんの要望にお応えし、表紙カヴァーのデザインをすべて
一新し、あらためて全国の書店に送り込む運びとなりました。こうなった背景には、みなさんの熱い思い、そして後押しがありました。この点に深く感謝しています。
デザイナーの選択には、SSKのメンバーとして、会社の垣根を越えてM澤さんが協力してくれ、企画論文の力作を書いてくれました。「美女のバストアップは、現在の新本格の読者には、やや古く感じられるであろう」という一文にはみな深く感じ入り、ほぼ全面的に彼女の意見を取り入れる形でデザイナーを選択して、ラフを完成しました。今回は、彼女の力量が光りましたね。感謝しています。
白バックに、ヨーロッパのアンティークなエレメントを、一冊ごとに複数組み合わせて配する、大変凝った、しかも美しいシリーズです。現在鋭意制作中ですが、これは一日も早くSSKのみんなに見てもらいたいものです。女性を中心に、吉敷ファンの多くには必ず受け入れられるものと確信します。
このお礼に、穴井さんがM澤さんを光文社の食堂に招待し、ランチを御馳走したそうです。テジカメ日記を熟読しているM澤さんは、「すすきのの熱い夜」を読んでちょっと不安を抱き、私のところに「あの、大丈夫なものでしょうか……」、とメイルしてきましたが、アルコールさえ入らなければ大丈夫です、安心して奢られてください、と力強く返事しました。後日彼女から、穴井さんはすごく紳士で、光文社の食堂の料理は、講談社のものよりおいしかったです、と報告がありました。いやよかったです。
「吉敷攻略本」、そういう人気急上昇の穴井さんのもとに、SSKのメンバーから直接提案のメイルが届いているようです。穴井さんより報告を受けました。多く、奇想の常連からですね。小島正樹さん、いわきさん、アケミねえさん、えびちゃんさん、ありがとうございました。参考とさせていただきます。
お待たせしている「WS刊島田荘司」ですが、新管理人が決定しました。Matthewさんという、Web製作会社のチーフ・プランナーです。サイト製作のプロですから、そしてもっか非常に燃えてくれていますから、仕事ぶりも大いに期待できるものと思っています。
これまで臨時管理人を引き受けてくれていた007氏との会見、そして引き継ぎも無事完了、大いに意気投合した模様です。もっかMatthewさんが、すべてのデータをレシーヴしてくれているところです。新しいWS刊は、Flashや、java
appletを多用した意欲作で、どうしてもBroadband用に仕上がっている観がいなめませんから、Narrowbandの人には重く感じられるはずです。そこで彼のアイデアで、Narrowband用に同じ内容のデータを地下にも置き、Narrowbandの人にもすみやかに楽しんでもらうという、2層構造のサイトを検討しています。館の扉を入ったら、玄関ホールにBroadbandの人用、Narrowbandの人用、それぞれの入口があり、別ルートを行きます。しかし、結果的には同じ内容を楽しんでもらうことができます。
この新館の新しいヴィジュアルも、tenさんが担当してくれます。あらゆる意味で画期的なものになりますから、期待していてください。杉永さんから引き継いだWS刊ですが、まず007さん、次いでMatthewさんと、2人のWeb専門家が少しずつ磨きをかけてくれており、ものすごいレヴェルのものに育ちつつあります。もう少しお待ちください。期待は決して裏切らないと思います。新装オープンに先がけ、新管理人のMatthewさんは、近くWS刊のBBSで紹介する予定です。まずBBSの管理から、彼は業務を開始します。
もうひとつニュースがあります。まだ決定ではありませんが、SSKがなんと7サイトとなる可能性が出てきています。もしかすると、実現するかもしれません。7番目のサイトは「第7銀河」といいます。管理人はsiriusさんです。
もしもそうなったら、007さんがFlashを用いて、画期的な新リンク装置を開発してくれる手はずになっています。これは動きのある、とんでもなく進んだ装置となる予定です。期待していてください。
2001年10月27日 島田荘司