島田荘司です。

 今年の予定刊行物をお話します。これ以外にもありますが、やることをはっきり決定しているもの、という意味です。後半のものは、別の予定が入れば、来年にずれてしまう可能性もあります。


★「改訂完全版、夏、19歳の肖像」
 奇想の源流の島田作品ランキングで、ノン・シリーズでの一位を続けている「夏、19歳の肖像」を、文春文庫が新装丁で復刻刊行してくれることになり、徹底加筆、修正して、先日文春に送りました。プロローグなどは全文を差し替えていますから、かなり新しい印象になっています。むろん全体の文章も、ローラー的に徹底して、すべて直しました。発売は5月10日です。
 表紙の新装丁に関して、バハマから届いた、ナッソーのガバメントハウスの写真の絵葉書、というイメージが私の内にあったのですが、今回担当の石井編集者に熱意があって、これを実現してくれることになりました。これで物語のエピローグと、表紙の風景が接続して、感動も高まると思っています。
 これはミステリー・マスターズ・シリーズの「魔神の遊戯」が、今秋に文春文庫に降りるため、これに併せて「夏、19歳の肖像」も新装して刊行し、文春の文庫棚に並べようと考えたからです。このたび刊行された南雲堂版の「秋好英明事件」も、3年後に文春文庫に入る可能性が出てきています。今後社に了承される必要がありますから、まだ決定ではありませんが、可能性は高くなってきています。日本の多くの冤罪事件のため、この可能性には喜んでいます。
 それから、もと内閣補佐官、錦織淳先生との対談本、「死刑の遺伝子」も、ここに加わる可能性があります。さらに、「季刊・島田荘司Vol.4」の冒頭においた小説「最後の一球」も、分量を気にせず、構想通りに加筆して原書房で刊行したのちは、この文庫グループに加えることを構想しています。


★「改訂完全版、名車交遊録」
 ネット世界で稀本扱いされている、立風書房刊行の「名車交遊録」を、連載後半の未収録原稿も加えて、近く原書房で復刻刊行します。これも改訂完全版として文章にはすべて手を入れ、磨きます。
 しかしただ刊行するだけでは読者に買われないということらしくて、冒頭に「人魚兵器」というちょっと変わった小説を収録します。こういう時、どうしても御手洗ものをと要求されるわけですが、これには彼は登場させないつもりです。ハインリッヒがスウェーデンからデンマークまで、オーレスンドという2国家間に架かる国際橋としては最長の橋を、ポルシェ356でドライヴしていき、人魚像に到着する頃に、以前御手洗から聞いた不思議な話を思い出す、という構造になっています。
 未刊行のエッセーに小説まで加わるとなると、分量が多すぎ、セレクトの要が出てきていて、これも悩みの種です。御手洗小説を載せなくても、本が読者に買われるようになってくれたらよいのですが。御手洗さんもの以外のストーリーも、もうずいぶん溜まって出を待っています。そろそろこういう文芸寄りのものも、季刊とか文春あたりで、どんどん発表できたらいいと願っています。


★「天に還る舟」
 小島正樹さんとの共作、「天に還る舟」が完成、すでにゲラになって手もとにあり、もっか最後の仕上げを施しています。tenさんの装丁で、SSKノベルスから、まもなく発売できるでしょう。tenさんも張りきっていますが、内容も非常に凝ったできで、私は気に入っています。
 同じく南雲堂SSKノベルスで、これと同時に香乃瀬たくみさんの「蒼き旋律の流れし夜に」も刊行されます。こちらは彼女1人の筆になる作品です。綺麗な作品ですから、こちらも是非読んであげてください。


★短編集「ヘルター・スケルター」
 カッパノベルスから、21世紀本格の短編集「ヘルター・スケルター」を刊行予定です。あと1〜2作、同種の短編作品を書き足さなくてはなりませんね。この本には、画家、石塚桜子さんの作品を表紙にお借りする予定にしています。


★「摩天楼の怪人」
 東京創元社の雑誌、ミステリーズに連載中の御手洗もの長編「摩天楼の怪人」が、今年6月刊行号で完結し、その後まもなく発売になります。連載原稿を俯瞰し、多少の加筆を行うかもしれません。


★「The Tokyo Zodiac Murders」
 IBC社がサンフランシスコ、バークレィにあるストーン・ブリッジ・プレスという出版社を傘下におさめたので、「占星術殺人事件」の英訳版、「The Tokyo Zodiac Murders」が、この出版社によって秋 から北米全域で発売されます。


★「ミタライ・カフェ、秋好事件特集号」
 「秋好英明事件」のその後の経過を、みなさんに報告したいと思っているのですが、他の企画計画が多いために季刊にも入れられず、秋好さんからの手紙、またこちらサイドの書簡やメイルも、ずいぶん溜まっています。九州、大阪、東京に分布し、まだ訪ねられる秋好事件関連の喫茶店など紹介しながら、秋好事件が現在立っている位置を伝える本を計画しています。これはまだ計画段階で、決定はしていませんが、もしやるならば、巻頭にはむろん小説も配するつもりです。


★「樹海都市」
 ZからAまでの英文翻訳タイトルを並べた精選短編集「樹海都市」を、A5版、箱入美麗本で、講談社から刊行する予定です。これは年内の刊行が目標です。長年の懸案なので、今年はなんとか頑張りたいですね。


★「島田荘司全集」 
 南雲堂刊行の「島田荘司全集」ですが、新素材による前例のない箱の計画がまた白紙に戻るなど、デザインが大いに難航しています。これは南雲堂の責任ではありません。しかしこちらも、今年中には第1回配本を刊行できる予定です。


★「本格ミステリー創作講義(仮題)」
 これは文京区民会館と、福山市のエストパルク市民ホールで行った講演、それに南雲堂の会議室に作家志望の新人たちを集めて行った、創作上の質疑応答会の録音を併せ、講演録の変形として、南雲堂から発売します。日本のミステリーの特殊な歴史をたどり、踏まえた上で、現在の執筆はどうあるべきかを考え、デビュー前の新人の疑問に具体的に応え、考えを述べたものです。本格志望作家の必読の書となっているはずです。


 それからこれらとは別に、光文社文庫が高木彬光作品を今後定期的に刊行していくことを決定したので、第1回配本「成吉思汗の秘密」の巻末に、高木彬光先生との交流の思い出を、エッセーふうに書きました。「成吉思汗の秘密と、高木彬光さんと、自分」と題した、1983年頃の回想ですが、個人的には今大変気に入っている文章です。これは作品解説とは別で、通常の解説は、山前譲氏が担当します。


 大嶋美智子さんの「龍臥亭組曲」のCDが完成しました。大変よいできで、私は毎晩聴いています。抽選に当たった人へのプレゼント発送は、A井さんによってすでに完了したそうです。近くA井さんが、SSK各BBSにこの報告をしてくれます。


 みなさん注目の、東映・御手洗さん映画ですが、これはまだ内容の公表をとめられています。もう少しお待ちください。ただ東映としては、岡田裕介社長の肝いりで、「全国東映系一斉公開!」のレヴェルにすることをもくろんでいるそうです。そうなると役者さんも限られてきて、こういう人には当然企画が殺到していて、というのがハードルですね。
 この「全国東映系の一斉」という規模を縮小するなら、すぐにでも企画は進行できるわけですけれども。そうした方がよいのかどうか。さてどうなりますやら。ここまで来たら、もう作るべきでしょうね。私も全面協力します。
 では今回はそんなところで。

2005年3月10日 島田荘司