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| あいつが還ってきた エキゾチックな極小期コロナを見た! ![]() この3月29日に北アフリカから地中海を縦断して東ヨーロッパに抜ける地域で,久々に好条件の皆既日食が起こった.好条件の訳は,晴天率の高い北アフリカで見えること,皆既時間4分前後で太陽高度も高いというところにある. そこで私は,いつも「あいつが還ってきた」のキャッチコピーで日食ツアーを展開している株式会社朝日旅行名古屋支店に,名古屋発着の“皆既日食ツアー”の企画をお願いすることにした.候補地としては,リビアのエクリプスシティ,エジプトのサッラーム,トルコのアンタルヤが挙がったが,リビアはハードであること,トルコは晴天率に難がある.ではエジプトはというと,晴天率も悪くなく天文ンなら一度は見たいピラミッド観光も付いてくる.というわけで,簡単にエジプトサッラームに決定. 今回のツアーは,10日間の日程でありながら,観光はギザとカイロ周辺それにアレキサンドリアだけ,皆既帯のサッラームのテント村に前日の午前中入るという余裕と安心の企画となった. ●いつになっても気になるのは天気のこと 3月24日名古屋は快晴.16時25分,総勢15名を乗せた大韓航空KE758便は,ソウルに向けて離陸した.名古屋からはカイロへの直行便がないため,ソウルで乗り継ぎとなる.約2時間で無事到着.トランジットの間免税店回りをしながらも,目は世界の天気予報のディスプレイを探し,カイロの天気を食い入るように見ている自分.問題なのは日食当日の天気だけだとわかっていても,太陽マークを見るだけで気分が楽になる.これは明らかに「日食症候群」に感染している証拠. 21時15分KE951便にてカイロに出発.ドバイ経由で16時間の長旅だ.カイロに着いたのは午前7時過ぎ.いつもなら,日食該当国に入ると,たくさんの日食ツアー客を見かけるものだが,不思議なことに日食ツアー客らしき人波は,私たち以外見当たらない. 入国検査で特に厳しい荷物のチェックを受けることもなく,すんなりエジプトに入国.朝日を浴びたカイロの街を見渡すと,スモッグで霞んではいるが晴れている.これだけで観光の足取りが軽くなる. ●ピラミッドの威容にしばし呆然 ![]() 空港を出てバスに乗り込むと,最初の目的地であるギザに向かった.しばらく走ると町並みの向こうにピラミッドが見えてきた.この非日常の風景がエジプトに来たことを実感させてくれるとともに古代エジプト文明への好奇心を掻き立ててくれる.とくにギザの三大ピラミッドは,オリオン座の三ツ星をモデルに建築されたという説もあるほど,天文学に深い関係があるため,興味は尽きない. バスを降り,第1ピラミッドと対面したとき,大きいことはわかっているつもりでも,天を覆いつくように聳え立つ威容を目の当たりにすると,度肝を抜かれてコロナを見たときのようにしばし呆然とする. 第2,第3ピラミッドとしし座との関わりがあるといわれるスフィンクスを観たあと,私たちを乗せたバスは,天文学のふるさとともいえるアレキサンドリアに向かった. ●天文学のふるさとアレキサンドリア ![]() 地中海に面するリゾート,アレキサンドリアはカイロに次ぐエジプト第2の都市.紀元前4世紀アレキサンダー大王がこの地を首都に定めたことからこの名が付いた.またシーザーとクレオパトラでおなじみの町でもあるが,天文学の集大成であるアルマゲストを編纂したギリシャの天文学者プトレマイオスが活躍した町としてのほうが興味深い. ところで,エジプトに着いて2日間,日食ツアー客にも出会うこともなく,日食関連のポスターやグッズにもお目にかかれない,妙な静けさが漂っていたが,ついにアレキサンドリア図書館で日食の盛り上がりを実感することができた.図書館脇にあるプラネタリウムからたくさんの学生や生徒たちが,おそろいの日食バインダーを持て出てきたのである.話を聞いてみると,アレキサンドリアの学生全員がプラネタリウムで皆既日食の講座を受けて,当日はサッラームへ日食観望に出かけるという.日本では考えられないような自然教育への力の入れように感服しないではいられなかった. ●嵐が来た! ![]() 3月27日朝,いよいよ皆既日食観望の前線基地となるマルサ・マトルーフに移動.ところがそれまでの青空とは一転して,どんよりとした曇り空.移動中にとうとう雨まで降り出す始末.マルサ・マトルーフの夜の天気は,良くなるどころか強風が吹き荒れ嵐の様相.「ゲゲゲここまで来て嵐とは・・・・・」 明朝,恐る恐るカーテンを開けると,まだ雲は多いものの嵐は治まり青空が雲の合間から見える.観望地サッルームにバスが近づくにつれ青空はぐんぐん広がり,サッルームのテント村に到着したときには,快晴になっていた.しかし砂漠であるはずの地面はぬかるみ,水溜りが残り転々と残り,あちこちで車がスタックしている.昨夜はかなりの雨が降ったことを物語っている. ●すごい霧 ![]() 夜は,日食直前作戦会議と星空観望会のあと,星野撮影を行なった.ところがテント村の照明が明るいこと,あっという間に夜露でカメラから雫がたれるほどべたべたになってしまったことから,オシリス(オリオン)とイシス(シリウス)を数カット撮影して早々に撤退.明日の本番に控えることにした. 当日朝6時,浅い眠りから目覚め外に飛び出すと,あたりはなんと幻想的な霧のなか.しばらくすると今日の主役の太陽が,霧の彼方におぼろげな姿を見せ始めた.「それにしても砂漠で霧なんて想定外!」と心の中でつぶやきながら,霧が晴れることを祈るばかり. 午前8時30分,少し霧は晴れて気温も上昇し始めた.第1接触まであと3時間ほど.それまで露でぬれることを嫌って機材は出さずにたが,痺れを切らし望遠鏡やカメラのセッテ ィングを始める.まわりをNHKやロイターの取材班がうろうろしている.ここで私の撮影機材を紹介しておこう. @ ミニボーグ60ED直焦点+ニコンD200による10分ごとの撮影 A オリンパスE330+14-45mmズームレンズによる食の進行写真撮影 B ファインピックスS3Pro+12-24mm広角ズームレンズによる本影錘の撮影 C デジタルビデオカメラソニーRV900による望遠撮影 午前10時,日食ツアーのときにはいつも連れてゆくテルテル坊主に手を合わせながら,準備をしていると,北西からゆるやかに吹いてきた風が,上空を漂っていた霧を徐々に吹き払い,気がつけば雲ひとつない快晴の青空を私たちにプレゼントしてくれていた.やったーこんな最高の日食日和は初めてだ! ●4分間のエクスタシー 11時20分第1接触.太陽の右下が欠け始めたかと思うと.グイグイ月が太陽を食べて行く.雲の心配は全くなし.ツアーに参加した大学生の女の子2人に撮影助手をお願いして,快調にシャッターを切る. 太陽は金の糸のように細くなり,あたり少し暗くなって涼しい風が吹き抜ける.冷静なつもりでも鼓動が高なっているのは隠せない.「第2接触!」誰かが叫ぶ.ダイヤモンドリングは数秒しかない.カメラのファインダーから目を離せないまま,ブラケティングでシャッターを機関銃のように切る.続いて黒い太陽になると同時にその周りにコロナが広がる.極小期の皆既日食ということで,1995年のタイ日食のコロナを想像していたが,それとはイメージがかなり違う.黒い太陽の両側にまるでカニの足のように数本のコロナが飛び出している.いつもに比べるとなんとなく冴えないような気もする.大量のシャッターを切ったと,双眼鏡で改めて観てみると,両側にそれぞれ3本ほどのコロナがダークブルーの空に消え入るようにデリケートに伸びていることがわかる.繊細で弱々しさを感じさせながらもどこまでも伸びる幻想的で涙が出るほど美しいコロナは見たことがない.やがて,黒い太陽の右下に一点の光が現れたかと思うと見る見る大きくなりダイヤモンドリングとなって,4分間のエクスタシーに幕が下りる.そして,14時太陽は下の姿に戻った.まるで今までのことは夢だといわんばかりに・・・・・ もう5回目の皆既日食だというのに, やった!という満足感と安堵感,そして心地よい疲労感が心身を包み込んだまま,私は今回も夢の世界を漂っている. ![]() ●次は2008年と2009年 私たちは,その後再びギザに戻り宵空に浮かぶピラッミドを見,カイロのエジプト考古学博物館を見学した後,ピラミッドショックと皆既日食ショックを胸に秘めてエジプトを後にした.私の頭にはすでに2008年8月のロシア-中国皆既日食と,2009年7月の東南アジア-トカラ皆既日食に想いを馳せていたことは言うまでもない. |
| 皆既日食は人の価値観を変える |
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